ハンドパターンによる手札品質の評価
前章では、手札品質を「配られた手札全体が、プレイヤーの求める条件をどの程度満たしているか」としました。
本章では、この手札品質を実際に計算するため、手札をカード群の組み合わせ(ハンドパターン)として扱います。
実カードの組み合わせは65万通りある
40枚のデッキから初手5枚を引く場合、実際のカード単位で考えれば、その組み合わせは
通り存在します。
もちろん、これら65万通り以上の手札を一つずつ評価することは現実的ではありません。
しかし、デッキ構築で知りたいのは、必ずしも「どのカード名を引いたか」ではありません。
ハンドパターンとして表現する
そこで本稿では、実カードの組み合わせを役割ごとのカード群へ分類します。
デッキ内のカードを、役割に応じて \(A, B, C, D, E\) の5つのグループに分類します。
| 群 | 役割 |
|---|---|
| \(A\) | 初動札 |
| \(B\) | 貫通札 |
| \(C\) | 妨害札 |
| \(D\) | 捲り札 |
| \(E\) | 不純物 |
デッキ枚数を \(X\)、各グループの採用枚数を \(A, B, C, D, E\) とすると、
となります。
初手5枚に含まれる各グループの枚数を \(a, b, c, d, e\) とすると、
となります。
たとえば \((a,b,c,d,e) = (1,1,2,0,1)\) であれば、
- \(A\) 群を1枚
- \(B\) 群を1枚
- \(C\) 群を2枚
- \(D\) 群を0枚
- \(E\) 群を1枚
引いた手札を意味します。
このように、本稿では個々のカード名ではなく、\((a,b,c,d,e)\) というグループごとの枚数によって初手を表現します。
各ハンドパターンの発生確率
あるハンドパターン \((a,b,c,d,e)\) が発生する確率は、多変量超幾何分布によって次のように求められます。
分子は、それぞれのカード群から必要な枚数を引く組み合わせ数を表しています。分母の \(\binom{X}{5}\) は、デッキ \(X\) 枚から初手5枚を引くすべての組み合わせ数です。
したがって、それぞれのハンドパターンが初手として発生する確率を個別に求めることができます。
初手5枚の分類パターンは最大126通り
5枚の手札を5つのグループへ振り分ける場合、
を満たす非負整数の組み合わせを考えることになります。その組み合わせ数は、
です。したがって、初手5枚を5種類のカード群に分類した場合、理論上のハンドパターンは最大126通り存在します。
ただし、実際には各グループの採用枚数を超えてカードを引くことはできません。たとえば \(A\) 群を2枚しか採用していないデッキでは、\(a = 3\) となるハンドパターンは発生しません。
そのため、126通りはあくまで分類上の最大数となります。
望ましい手札を集合として定義する
次に、これらのハンドパターンの中から、そのデッキにとって「望ましい手札」を定義します。
望ましいハンドパターンの集合を \(G\) とします。たとえば、
といった手札を、プレイヤーが望ましい手札だと判断したとします。これらをすべて集合 \(G\) に含めます。
一般化すると、
となります。
そして、望ましい手札を得られる確率は、
として求めることができます。
つまり、プレイヤーが「どのような手札を良い手札と考えるか」を定義し、その条件を満たすすべてのハンドパターンの確率を合計するという考え方です。
条件によって手札品質を定義する
この方法では、デッキごとに異なる「良い手札」を条件として設定できます。
たとえば \(A\) 群を初動札とした場合、
だけを条件にすれば、「初動札を1枚以上引いている確率」を評価できます。これは一般的な初動率に近い評価です。
しかし、本稿で扱いたい手札品質は、さらに複数の条件を組み合わせたものです。たとえば、
という条件を設定すれば、
- 初動札を1枚以上持っている
- 貫通札を1枚以上持っている
- 不純物を引いていない
という手札だけを「望ましい手札」として評価できます。
あるいは、
という条件を設定すれば、「初動札をちょうど1枚持ち、さらに妨害札を2枚以上持っている」といった手札を評価することもできます。
このように、単純な「特定カードを引ける確率」ではなく、プレイヤーが実際に求めている手札全体の状態を条件として定義できることが、ハンドパターンによる評価の特徴です。
採用枚数変更による手札品質の変化
カードの採用枚数を変更すると、各ハンドパターンの発生確率も変化します。
たとえば \(A\) 群を7枚から8枚に増やした場合、
となり、それに伴って各ハンドパターンの確率 \(P(a,b,c,d,e)\) が変化します。その結果、望ましい手札集合 \(G\) の発生確率である \(P(G)\) も変化します。
したがって、構築変更前後の \(P(G)\) を比較することで、
その採用枚数変更によって、望ましい手札を得られる確率が実際にどの程度改善したのか
を評価できます。
この差を、本稿では以降の章で改善幅として扱います。
後攻6枚の場合
後攻では、自分の第1ターン開始時に6枚目のカードをドローします。
6枚の手札を同じ5つのグループに分類する場合、
となります。分類パターンの最大数は、
通りです。
したがって、後攻6枚についても同じ方法でハンドパターンを評価できます。
ただし、相手の第1ターン中に使用できるのは最初の5枚であり、6枚目に引いたカードには時間的な価値の違いがあります。
このため、本稿の基本的な採用枚数論ではまず初手5枚を中心に扱います。後手はより複雑であり、5枚から6枚に変化するため、別理論で検討する必要があります。※本理論では5枚から6枚に変化する場合は検討しません。