手札品質の考え方
イントロダクションでは、デッキ構築によって直接改善できる対象として「手札品質」を挙げました。
本稿における手札品質とは、単純に初動札を引けているかではなく、
配られた手札全体が、プレイヤーの求める条件をどの程度満たしているか
を意味します。
なぜカード単体ではなく手札全体を見るのか。まずはそこから説明します。
手札は「組み合わせ」で決まる
実際のゲームでは、初動札を単独で引くわけではありません。初動札・貫通札・誘発札・捲り札・不純物などが組み合わさった5枚を使ってゲームを始めます。
たとえば次の3つは、どれも「初動を引けている手札」です。
- 初動1枚 + 貫通1枚 + 誘発3枚
- 初動2枚 + 誘発2枚 + 不純物1枚
- 初動3枚 + 貫通1枚 + 誘発1枚
しかし、その価値は大きく異なります。初動率という単一の数字では、この違いを区別できません。
したがって本稿では、カード単体の「引ける確率」ではなく、5枚がどのような組み合わせで構成されているかを評価します。これをハンドパターンと呼びます。
引いた枚数と価値は比例しない
もう一つ、初動率だけでは表現できないことがあります。
初動札を1枚引くことには大きな価値があります。しかし2枚目、3枚目も同じ価値を持つとは限りません。
- 0枚:展開できない
- 1枚:非常に大きな価値がある
- 2枚:追加の価値はあるが、1枚目と同じとは限らない
- 3枚:さらに価値が低下する場合がある
つまり、初動札を \(a\) 枚引いたときの価値を \(v(a)\) とすると、
となるカードが存在します。1枚増えるごとの価値の増分が、枚数とともに小さくなるということです。
これが「初動札は増やせば増やすほど良い」とは言えない理由の一つです。
同じことは他の役割にも当てはまります。必要な枚数を超えて引けば、もともと有効だったカードも不純物になり得ます。
手札品質を構成するカード群
本稿では、手札を役割ごとにいくつかのカード群へ分類します。呼び方は一般的な遊戯王での用法に倣います。
| 群 | 役割 |
|---|---|
| 初動札 | 展開・行動を開始するためのカード |
| 貫通札 | 妨害を受けた後も行動を継続するためのカード |
| 誘発札 | 相手の展開や行動を妨害するカード |
| 捲り札 | 成立した相手盤面を処理するためのカード |
| 不純物 | その状況で手札にあると手札品質を下げるカード |
ただし、これらはカードに固定された性質ではありません。 同じカードでもデッキや状況によって役割は変わります。分類は評価者が目的に応じて決めるものです。
本稿では初手5枚を基本とする
遊戯王では、先攻・後攻ともにゲーム開始時の手札は5枚です。
後攻プレイヤーは自分の第1ターン開始時に6枚目をドローしますが、そのカードを得られるのは相手の第1ターンが終了した後です。この違いはカードの価値に影響します。
- 手札誘発:相手の第1ターンに使うため、最初の5枚に存在する必要がある
- 初動札・貫通札・捲り札:6枚目で引いても自分の第1ターンに使える
したがって厳密には、
- 先攻時の5枚
- 後攻時の最初の5枚
- 後攻時の6枚目を含む手札
で、求められる手札品質は異なります。さらに遊戯王では先攻と後攻でゲーム上の有利不利そのものが異なるため、それぞれの改善が勝率へ与える影響も同一とは限りません。
ここまで含めると、先攻・後攻それぞれについて別個の最適化が必要になります。
そこで本稿の基本理論では、まず双方に共通するゲーム開始時の5枚を評価単位とします。先攻・後攻への重み付け、後攻6枚目の評価、誘発札・捲り札の時間的価値については、基本的な採用枚数論とは分離して扱います。
まとめ
本稿では、手札を役割ごとのカード群に分け、5枚の組み合わせをハンドパターンとして扱います。
そのうえで、それぞれのハンドパターンに対して、
- この手札は望ましいか
- この手札は許容できるか
- この手札は避けたいか
という条件を設定し、望ましい手札が発生する確率を計算します。
次章では、このハンドパターンを実際に数式として扱う方法を説明します。